豊かな自然と美しい街並みが残る城下町、そして3つの「ガク都」(「岳都」「楽都」「学都」)など、魅力あふれる松本だが、松本を語るうえではずせないのが“カレー”である。「なぜ、カレーなのか?」、その真相を紐解くために、松本カリーラリー主催者そして「松本カリー」推進委員会 委員長でもある「エスニックカリー メーヤウ」の小山修さんに話を聞いた。
◎洋食の街である松本カレーの発祥は!
―まずは松本のカレーの歴史を教えていただきたく。最初にできたカレー店はどちらでしょうか?
僕はカレー歴史研究家でもカレー博士でもないので(笑)、あくまでも聞いた話になってしまうのですが。松本駅前にある『タツミ亭』さんが、早くからカレーを提供したのではないかと言われています。松本は歴史あるお店が多く、“洋食の街”でもあるので、そんな洋食文化からカレーが広がっていったのではないでしょうか。
―『タツミ亭』さんは創業100年を迎える、老舗の洋食屋さんですね。
カレーの専門店ということであれば『モーリ』さんになるんじゃないかと思います。昔は上土にあったと聞いています。日本人が作るスパイス系のインドカレーを最初にはじめたのは『デリー』さん(2017年に惜しまれつつ閉店)が元祖なのでは。松本ではないのですが、実は“純インド式カリーの元祖”と言われている『新宿中村屋』さんの創業者は安曇野市出身なんですよ。
―え!それ、すごいですね。ラーメンの神様と呼ばれている『池袋大勝軒』の創業者も長野県出身だし…。
カレーとラーメン。長野県が“2大国民食”のルーツに関わっていると思うと感慨深いですよね。
◎家で食べるカレーから外で食べるごちそうに
―なぜ、松本でここまでカレー屋さんが増えたのでしょうか?
松本ってカレーに限らず、人口規模に対して飲食店が多い街だと思うんですよね。しかもナショナルチェーンは少なく、個人のお店が多い。これだけお店がある中で、生き残っていけるということは…。
―レベルが高いお店が多い!
そう、舌が肥えている松本市民の皆さんを満足させられるお店だということだと思います。カレーは食べ物として非常にポピュラーだし、家でもよく食べられる料理なので、外で食べてもらうには相当な努力が必要だと思うんです。そういう意識で、みんなで切磋琢磨し、それぞれのお店の味や個性を磨いていったのではないかと。
―松本はカレー以外にも魅力的なお店がたくさんありますもんね。その中でカレーが選択肢にあがるというのが、すごいです。
観光地なので外食文化が根付いて、外でそのお店の味を楽しむという風土があったんでしょうね。定食屋さんや中華料理屋さんど、いろいろな選択肢がある中で、カレーもそのひとつだったのではないかと。あくまでボクのひとつの仮説ですが(笑)。
松本にカレー文化を根付かせるため、日々奮闘する「メーヤウ」の小山修さん
◎ファンが多い店『メーヤウ』の歴史
―『メーヤウ』の開店は?
1991年です。当時のオーナーは別の方で、東京のメーヤウで修業していた方が松本店を出したんです。25年前に当時店長だった私の父が店を継ぎ、今に至ります。
―いろいろな人が『メーヤウ』さんのカレーを絶賛していますよね。
ありがたいことですよね。信大に近いので、信大の卒業生が「思い出の味」と紹介してくださる機会も多いですね。うちのカレーは、インド人がやっているインドカレーとか、タイ人のカレー屋さんとはまたテイストが違うので。
―他にはない味ですよね。
お客さんによく言われるのは「メーヤウにカレーを食べに行くという感覚はない。メーヤウを食べに行く」と。カレーというより、メーヤウというジャンルなんでしょうね。カレーはカレーなんですけど(笑)。松本の中では同じ系統のカレー屋はないんじゃないかなと思っています。
『メーヤウ信大前店』の「好きなカリー4種類セット(大皿盛り)」(1,150円)
◎松本のカレーを牽引する令和の店 昭和の店
―カレーの街・松本。最近の傾向は?
松本は最近スープカレー屋さんが増えてきている印象ですね。『MERA』さんと『カフェれら』さんと、2軒ともスープカレー専門店で、2軒とも「松本カリーラリー」にも参加していただいています。
―新しい店が増えている中で、松本のカレーを語るうえで欠かせないお店もありますよね。
そうですね。カリーラリーにも参加いただいている『キッチン南海』さんは、カツカレーという日本にしかないカレーの文化を根付かせた功労者。店主さんは東京・神保町で修業されて松本店をオープンされたので、『メーヤウ』と同じく東京にもお店があるんです。
『キッチン南海』の昔から親しまれる王道の味「カツカレー」(800円)
住所:松本市中央4-7-20
―そうなんですか!?
みんな驚きますよね。「え!?松本にもあるの?」って。あと、松本のカレーを牽引する存在といえば、親しみやすくも、独自のスパイスカレーを生み出し続ける『がねいしゃ』さんと、インドの家庭料理の味を伝える『Doon食堂 印度山』さん。この2店も欠かせないお店だと思います。
『スープカリーの店 MERA』の「やわらかチキン スープカリー」(1,320円)
◎カレーの街・松本のこれから―
―7月9日~11日はカレーフェスを初開催しましたね。
カレーフェスはずっとやりたいと思ってたんですよね。今年は松本市内のカレー屋さんだけの出店でしたが、次は県内のカレー屋さん、ゆくゆくは全国のカレー屋さんを呼べるようなイベントに育てていきたいなと思っています。そうしたら文字通り、松本が“カレーの街”になるのかなと。
リユース食器 付きのエコ イベント
―『松本カリーラリー』も、今年は7回目。初開催のきっかけは?
7年前に、松本で大雪が降った2月。お客さんが全然来ないので、『想雲堂』の渡辺さんと「何かやろうか」と言ってはじめたのがきっかけです。最初の年の参加件数は29件でしたね。
―今の1/3の件数ですね。
1回目は第2回、3回と続けるつもりはなかったんですが思った以上に好評で。年々参加店が増え、とてもうれしいですが、限られた人数でやっているのでとりまとめが大変です(笑)。
―これからの目標は?
松本って、カレーだけじゃなく魅力がいっぱいある街なんですよ。蕎麦もあるし、洋食もあるし、バーの街でもあるし。いろいろな魅力がある中で「松本のカレー屋さんってレベル高いよね」って、カレーをきっかけに県外から遊びに来てもらえればいいな。今は住んでいる人たちを動かす動機づけとしてやっていますが、最終的には県内外の方たちにアピールする展開ができたらおもしろいかなと。まだまだ外でカレーを食べる人の割合が少ないので、外でカレーを食べる人が増えればうれしいですね。
第7回 松本カリーラリー
松本がカレー一色になる恒例イベント。第7回を迎える今年は90店の飲食店が参加し、各店それぞれに工夫をこらしたカレーやカレーにちなんだメニューを提供する。まずは参加店にて公式パンフレットをゲットし、各店の味を楽しもう!まわった数に応じてオリジナルグッズをプレゼント!
参加店情報は公式サイト(matsumotocurryrally.blogspot.com)をチェックして!
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