設計だけでなく家づくりの基本から相談できるのが建築士。「設計事務所はハードルが高い…」と感じている方に贈る、リレー形式の対談企画です。第3回目の今回は、前回聞き手役をお願いした勝野建築事務所の勝野さんを話し手役にお呼びし、聞き手役を、ハイランドデザイン一級建築士事務所の髙橋さんにお願いしました。
勝野 大樹さん |勝野建築事務所
長野県出身。明治大学大学院理工学研究学科博士前期課程修了。入江経一+Power Unit Studioや長野県内設計事務所に勤務後、信州大学大学院の研究科修了。2018年「勝野建築事務所」設立
髙橋 正嘉さん |ハイランドデザイン一級建築士事務所
青森県八戸市出身。芝浦工業大学大学院工学研究科建設工学専攻修了。納谷建築設計事務所、ジュネラルデザインなどでの勤務を経て、2010年ハイランドデザイン一級建築士事務所を設立
Q1 家づくりは何から始めたらいい?
勝野さん:まず手っ取り早いのは、インターネットなどで気になる情報を検索してみることだと思います。
髙橋さん:確かに、お店の場所や料理のレシピであれば、直線的に情報を得ることができて便利ですよね? でも、家づくりだと問題が大きくて、「得たい情報自体が分からない」という人もいるのではないでしょうか
勝野さん:髙橋さんのおっしゃる通りで、費用のことや土地のこと、建てた後の税金のことなど、「家づくり」とひと口に言っても問題が多岐にわたり、今自分がどんな情報を欲しているのかが漠然としてしまいがちです。何が分からないか分からない状態。そんな方におすすめなのは、設計事務所が開催している「家づくり相談会」に足を運ぶこと。実際に誰かに話をしてみると、「自分にはこんな家づくりが合っているんだ」と、気づくことができます。また、住宅の相談会に行くと、「その後にしつこく営業されるのでは?」と心配な方も、建築士の方が個人で設計事務所を運営されている場合、人によりますが…営業的なプレッシャーはありませんので、強引な営業の心配もありません。
髙橋さん:家づくりをスタートする上での窓口や、きっかけになれればという感じですね。
Q2 建築士に頼むメリットとは?
勝野さん:率直に言うと、「じっくりと時間をかけた家づくりができること」だと思います。大手のハウスメーカーさんだと、打ち合わせは何回と決まっているケースが多いそうですが、建築士にそういった制限はありません。お互いが納得するまで何度でも打ち合わせをして、プランの修正も行います。
髙橋さん:逆に、早いスパンで家づくりを進めたい人は建築士に依頼するのは向いていない?
勝野さん:そうですね。暮らし始めてからの後悔がないように、なんでもかんでも詰め込むというよりは、お客さまにとって本当に必要なものを見極め、取捨選択し、最良のプランを提案しようと心がけています。そのためにはお互いに納得できるプランが完成するまで、じっくりとお話を伺うことになりますので、どうしても時間はかかってしまいますね。早くて1年くらい。
髙橋さん:では、家づくりを一緒に楽しみたいという方にとってはメリットですね。
勝野さん:一緒に楽しんでいただけるとこちらもありがたいです。はじめて相談に来られた際も、メリットとデメリットの両方をお話して、逆に「建築士でない方が良いかな」という方には他の選択肢も提案するようにしています。
Q3 設計やヒアリングで心がけていることは?
髙橋さん:家づくりの際には、「じっくりと時間をかけて話を伺う」ということですが、設計やヒアリングで勝野さんが心がけていることは何ですか?
勝野さん:お客さまが“家とはこうあるべき”という固定概念にとらわれている場合が多い気がします。以前、3LDKが欲しいと訪れたお客さまが予算的にその広さは厳しいので、その理由を聞いていくと「昔実家がそうだったから」という意外と単純な理由でした。お客さまにとってオンリーワンの家をプランニングするためにも、僕自身が感じた疑問に対しては素直にお伺いするようにしています。
Q4 “建築費高騰”勝野さんの考える対処法とは?
髙橋さん:建築資材などの高騰により建築費が上がっていますが、予算組を含めどのような対処法を行っていますか?
勝野さん:以前より、プランニングに入る前の事前準備に時間をかけています。その中でファイナンシャルプランナーに協力を仰ぎ、状況次第ではリフォームの提案もしています。
髙橋さん:それでも予算内に収まらない場合は?
勝野さん:お客さまからすると、予算が合わないことはネガティブなイメージしかないかもしれませんが、そういった状況になってはじめて、本当に欲しいものが浮き彫りになってくるとも思います。「本当に必要かどうか」を見極めていく中で、プランを大幅に変更したり、面積を小さくしたり、お客さ
まが後悔のないようにとことん付き合っていく感じです。
Q5 勝野さんの設計する住宅の特徴は?
髙橋さん:お客さまのライフスタイルに合った設計を行うということですが、勝野さん自身が意識する設計の特徴はありますか?
勝野さん:広がりのある大きな空間を取り入れることは意識しています。普段の暮らしでの心地よさの中で、「自然と人が集まる」ような空間を目指しています。また、プライベートな時間も大切にできるように空間の広さには緩急をつけ、大きな空間をつくると同時に小さな空間も設けるようにしています。
髙橋さん:デザイン面ではどうですか?
勝野さん:外に視線が抜け、空間に広がりを感じられるよう、窓の配置やサイズには気を配っています。また、仕上げに関しては、家は長く住み続けるものですから、メンテナンスのしやすさも大切です。住んでから、「メンテナンスにどれだけ時間やお金をかけられるか」という点はお客さまによって違いますから、それぞれのニーズに合わせて塗り壁であったり、メンテナンスのしやすいクロスを使うこともあります。
【 勝野さんの住宅の特徴】
>>次回の話し手は『ハイランドデザイン一級建築士事務所 髙橋 正嘉さん 』
>>第2回【建築士と考えるナガノの家】清水 宏さん・眞里子さん × 勝野 大樹さん
●住所
長野県伊那市荒井3738-1
●TEL
0265-98-8314
●定休日
不定休
●URL
https://ktn-a.com/
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