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【建築士と考えるナガノの家】牧田 繁さん × 清水 宏さん・眞里子さん

公開日:2023/05/31

設計だけでなく家づくりの基本から相談できるのが建築士。「設計事務所はハードルが高い…」と感じている方に贈る、リレー形式の対談企画です。第1回目の今回は、mA建築計画工房の牧田さんを話し手役にお呼びし、聞き手役を、住まい工房の清水ご夫妻にお願いしました。

牧田 繁さん|mA建築計画工房

長野県出身。東京理科大学理工学部建築学科卒業。2000年4月に「mA建築計画工房」を設立。“住まい手の思いを実現する家づくり”をモットーに、個人住宅の設計・設計監理を行う

清水 宏さん・眞里子さん|住まい考房

夫婦ともに長野県出身。1997年に「住まい考房」を共同設立。“日本の美しい住まいや暮らし”を見つめながら、個人住宅や商業施設の設計、古民家再生、リノベーションなどを手掛ける

 

Q1 設計事務所に設計を依頼するメリットは?

 

牧田さん:一対一の関係だと、どうしてもプロの方が強くなってしまって、建て主が都合を受け入れるしかない状況になりがちです。ここに建築士が入って三者の関係になれば、建て主の意向に添った家づくりができる。この点が、私たち建築士にご依頼いただくメリットではないかと思います。

清水さん:設計と施工が同一の事業者であることによるトラブルも聞きますよね。たとえば変更があったときに、建て主はお金がかからないと思っていたのに、業者から後で見積もりが来て「話が違う」となってしまったり。設計の段階であったものが、できあがった家に反映されていなかったという事例も聞きます。

牧田さん:あとは、建て主の要望をそのまま形にするのではなく、打ち合わせを何度も重ねて、より建て主の好みや暮らしに合った家になるように設計していること。私は図面の完成に一年以上はかけていますが、業者によっては短期間で作っている場合も多いですよね。

 

 

Q2 建築士に頼むとコストは高い?

 

牧田さん:必ずしもそうとは限りません。ひとつの図面に対していくつかの施工業者に見積もりを依頼するんですけど、設計事務所との仕事をよく経験している工務店や建設会社と組めば、適正な価格で出してくれます。業者との信頼関係を築くことができれば、結果コストダウンになることもありますしね。

清水さん:図面の書き方や、業者が在庫で持っている材料を使うかどうかなどでも、工事費は全然変わってきますよね。施工業者のポテンシャルを引き出すのも、建築士の仕事かもしれません。予算額に対して要望がかけ離れている場合はどうしていますか?

牧田さん:後から変更できないものを優先したいと思っているので、家の規模や性能については、きちんとお金をかけていただくようにしています。使う材料を選ぶ段階で費用と照らし合わせて「これを使うとこれだけ予算オーバーしますよ」ということを伝えています。つまり、仕上げの部分を抑えていることが多いですね。

清水さん:牧田さんの強みは、施工のこともよく分かっているところだと思います。その家がちゃんと成立するかどうか、そういうコスト管理をしっかり行っている。いつも感心していますよ。

 

Q3 牧田さんの設計する住宅の特徴は?

 

牧田さん:個人的には、「自分らしさ」というのは特にないと思っていますが…。

清水さん:私たちから見ると、片流れだったり、壁が斜めだったり、牧田さんの手掛けた家には個性を感じますよ。吹き抜けを上手に使っているのも印象的。デザインにおいては、建築士の好みの部分も出ちゃうものですよね。

牧田さん:好みで言うと、切妻や片流れともにシンプルな一枚の屋根が好みです。自分でつくっている家も、結果そういう形が多いかも。

清水さん:あと、牧田さんの家には遊び心があるなと感じます。

牧田さん:好みで言うと、切妻や片流れともにシンプルな一枚の屋根が好みです。自分でつくっている家も、結果そういう形が多いかも。「ここに座った時に、あそこに窓があったらいいな」とか、そういう発想を設計に落とし込んだりしています。建て主にはあえて言わないですけど(笑)。いずれにせよ、建て主とのディスカッションを経て、オリジナルな住宅を設計するようにしています。

 

Q4 設計の際、心がけていることは?

 

牧田さん:建て主、敷地の形状や立地条件など、その計画なりの個性を重視することでしょうか。敷地があり、建て主がいるからこそ家づくりはできるもの。「この敷地だからこの形なんだ」と建て主の腑に落ちるを設計したいと思っています。以前、坂道沿いに家を建てた時は、その敷地の傾斜を活かして家を建てました。室内で違和感が生まれないように適度に段差を取れば、擁壁をそれほど打たずにつくれますから。

清水さん:段差があると、通常は敷地を平らにして…という選択になりますよね。

牧田さん:家から田園風景を眺めたいという建て主に対しては、一緒にその敷地に立って「どの景色を見たいですか?」と確認して、家の向きや間取りを決めたこともあります。

 

Q5 住宅を構成する要素の中で最も重要なものは?

 

牧田さん:室内環境です。ランニングコストを抑えて、快適に住めることが大切だと思います。かつては「寒かったら厚着をすればいい」「暑かったら脱げばいい」という具合に、我慢して住んでいたのが日本の家。北海道は独特で、真冬でも裸で寝られるくらいに暖房をガンガン焚いている家が多いようですが(笑)。それは極端にしても、基本性能として断熱はしっかりと入れるようにしています。

清水さん:断熱性能への規制が厳しくなる前から、牧田さんは断熱に力を入れていましたよね。

牧田さん:繰り返しになりますが、後から変えられないところにはケチらずにお金をかけてほしいのです。

 

 

Q6 牧田さんの考える”ナガノらしい家”とは?

 

牧田さん:長野県らしいというと外観の話になりがちですけど、私はやはり、寒暖差の激しい長野県でも快適に暮らせる室内環境を持つ家が、“ナガノらしい家”だと思います。具体的に言うと、断熱性能が高いことはもちろんですが、それだけではなく、大きな窓があって、そこから太陽の光を入れたり風を通したりできる家ですね。窓の配置やサイズは、結構気にしています。断熱性能が高い=快適…ではないので、建て主にとって本当に快適な空間をつくれるように、いろいろと工夫して設計するようにしています。

 

【 牧田さんが手掛けた住まいチラ見せ! 】

 

>>次回の話し手は『住まい工房の清水ご夫妻』

 

株式会社mA建築計画工房

●住所
松本市中央3-7-4
●TEL
0263-34-0650
●定休日
不定休
●URL
https://ma-architect.jp/

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