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【建築士と考えるナガノの家】増永 豪さん × 林 裕一さん

公開日:2024/06/25

設計だけでなく家づくりの基本から相談できるのが建築士。「設計事務所はハードルが高い…」と感じている方に贈る、リレー形式の対談企画です。第5回目の今回は、前回聞き手役をお願いしたREGISTA一級建築士事務所の増永さんを話し手役にお呼びし、聞き手役を、一級建築士事務所 林設計室の林さんにお願いしました。

増永 豪さん |REGISTA 一級建築士事務所

神奈川県出身。芝浦工業大学工学部建築学科を卒業。神奈川や東京の建設会社、設計事務所にて、公共事業、個人住宅などの設計等を経験。2012年REGISTA一級建築士事務所を設立

林 裕一さん |一級建築士事務所 林設計室

長野県岡谷市出身。信州大学工学部工学科を卒業。(株)類設計室へ入社し、公共事業の設計等を経験。長野県に戻り、実家の家具工房で家具造りに携わった後、1997年に林設計室を設立

 

Q1.家づくりは何から始めたらいい?

 

増永さん:まず「何を重視したいか」をよく考えてみると、家づくりへの動機がはっきりしてきます。ただ、それは人それぞれで正解はないから、「丸い窓が欲しい」とか、どんな小さなことでもいいんです。

さん:こういう家を建てたいという夢があるケースはいいけれど、今の家が手狭になったとか、必要に迫られてという場合は難しいよね。

増永さん:自分はコミュニケーションをとりながら、潜在的なニーズを引き出すように心がけます。もっと単純に、普段の生活で大事にしていることとか。「アウトドアは好きだけど、家ではゆっくりしたい」となれば、そこから考えることがスタートする。「今までの家は寒いから暖かい家がいい」という希望も、今は標準的な家でも暖かいですし、例えば床暖房の部屋でゴロゴロするのはどうか、とか一緒に考えていきたい。

 

 

Q2.建築士との家づくりってどんな感じ?

 

増永さん:決まったパターンやプランはないので、コミュニケーションをとりながら、好きなコトやライフスタイルを引き出しつつアイデアをプラスして、それを建築の空間に繋げていく。その手法にも建築士ならではというのがあって、僕と林さんでも違ってくると思うし、それが建築士と家づくりをする上での面白さになるのかな。

さん:パターンが無いのは大きな特徴だね。

増永さん:パターンがあれば、打ち合わせの回数も少なくて済むけど、家づくりの過程で意見や希望をやり取りをする場面はたくさんある。それが楽しめる人は建築士との家づくりを楽しんでもらえるのかな。

さん:打ち合わせの回数も内容も、段階によって変わるよね。最初は大きな間取り、徐々に棚の内側や照明といった細部に。

増永さん:棚やパントリーも、ライフスタイルに合わせて作り込むことで満足感も違う。実際に使って「良かった」と思ってもらえることが大事で、そのために打ち合わせをしっかりやりたいし、それをできるのが建築士の強みですね。

 

 

Q3.”建築費”で考えるべきポイントは?

 

増永さん:物価の上昇で建築費も上がっているから難しい問題。でもやっぱり「新しい生活で何が大事なのか」を把握して、優先順位をつけること。もう一つは、建物の本体価格以外の出費も含めた総額の予算を想定しておくのが大事ですね。

さん:ただ、建築士の場合は決まったパターンが無いから、予算を伝えるのは難しい。

増永さん:自分は、直近に手掛けた家の間取りや仕様を例にして、家具や照明を含めた総額を伝えるようにしています。ソファやダイニングセットもなかなかの金額になりますからね。

さん:だから家具は最後に買うのが鉄則。

増永さん:家具に大きく予算を割くと、建物に割けなくなることもある。「その分があれば一部屋床暖房を増やせたのに!」とか。そうならないためにも、優先順位をつけて必要なところにお金をかけることが重要ですね。

 

 

Q4.断熱や省エネはどうでしょうか?

 

増永さん:来年4月から新築住宅にも省エネ基準の適合が義務化されるので、それを守るのはもちろん。それ以外の数値に出ない部分も含めて考える必要があると思います。

さん:数値化すると分かりやすいから、競争になってしまいがちだけど、行き過ぎちゃうのはちょっとね。公道を走る車に300馬力も必要ない。それよりほかにお金をかけたほうがいいかなっていう。

増永さん:たしかに、基準以上に性能を上げるよりも、予算は限られているから、ほかにトレードした方がいい。敷地の標高でも違うし、吹き抜けや窓の配置を工夫して空気を抜けやすくするといった数値に出ない工夫もあるから、ライフスタイルを楽しみながらランニングコストを抑えることもできますね。

 

 

Q5.増永さんの設計する住宅の特徴は?

 

増永さん:大事にしているのは、お客さまの希望とか立地環境とか、好きなこと。それを建築の空間と一致させるためのアイデアを考えること。例えば今進んでいる計画では、敷地にお客さまの思い入れがある松や樅といった大きな木がたくさんあって、それらをフローリング用の建材や建具に加工して、建てる家に生かそうという案を出して進めています。

さん:それは満足度も違いますね。

増永さん:建築士だけじゃなく、製材所や建具屋、もちろんお施主さんも、家に携わるすべての人が一つのチームになることで、できることの幅はぐっと広がります。作る過程を大事にすれば、敷地が緑豊かな土地だったという記憶も残り、住んでからの愛着も違ってくると思うんですよね。

 

【 増永さんが手がけた住宅】

 

>>次回の話し手は『一級建築士事務所 林設計室 林 裕一さん 』

>>第4回【建築士と考えるナガノの家】髙橋 正嘉さん × 増永 豪さん

 

REGISTA 一級建築士事務所

●住所
上伊那郡辰野町伊那富3155-1
●TEL
0266-55-3996
●URL
https://regista-architects.com

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